無駄を削ることと、その政策や事業自体を止めることの差

ブロゴスのみならず、アメーバ等でも、さつきブログにおける財政赤字論争が、話題になっていますが、日曜日の報道2001で、歳出カットの切り札とされていた、「行政刷新会議」で行う、「事業仕訳」。そもそも、国の社会保障制度を変えたり、国家的プロジェクトを取りやめたりするような判断をするような場なのでしょうか。

事業仕訳は、わが先輩の、加藤秀樹さんが、構想日本という政策集団で、こつこつ、おもに地方自治体を回って、定着につとめて来られた手法です。公明党さんなどは、「無駄0チーム」で、2003年ごろから、地方議員もご一緒に、似たようなアプローチの勉強会を開いておられ、私も、主計局時代に、何度か、呼ばれてお手伝いをしました。
  その後、自民党も「連立与党}として、加わり、政府に「行政効率化会議」ができ、「コピーはすべて両面で」とか、残業削減、とか、細かい無駄カットルールを次々課していきました。私は、担当課長として、その事務局を1年ほどやっていました。これは、政治の仕事というより、本来役人が自分たちでやるべきことで、それがしっかりしてなかったので、政府として襟をただした、という性格のものです。
 
 自民党内でも、福田政権、谷垣政調会長の時の、無駄撲滅チームでは、民間仕訳人こそいらっしゃらなかったけれど、広報やレクリエーション経費、タクシー代、委託調査費、随意契約(競争入札しないで特定相手と契約するもの)など、国会論争やマスコミで、「無駄」と叩かれた経費を中心に、全省庁の経費に見直しをかけ、21年度予算の概算要求に、反映させました。


 いずれにせよ、たとえば、農業で、価格安定制度を止めてしまう、とか、子育て応援手当を止める、とか、政治的判断を伴うような、政策の可否の判断をするものではありません。

 報道2001でも、ある市で行われた例が映っていましたが、市内の無料循環バスを、市が直営する形で、継続するのか、民間委託で経費節減するのか、廃止するのか、について、市民から選ばれた仕訳人と、有識者仕訳人が議論し、市側が質問に答え、投票で決を採る、その結果を市も参考にする、というもので、あくまで最終判断は、市、市長です。

 裁判員制度が、実施されていますが、これまでの評決結果を分析すると、「求刑の8掛け」という、裁判官の判決における相場とほとんど似たような結果になっているそうです。これが日本人のバランス感覚なのかなあ、と思う次第ですが、事業仕訳における民間仕訳人の参加も、似たような側面があるのではないでしょうか。

 予算査定のプロセスを透明化する、市民に参加意識を持っていただく、これは、財政赤字解消における民意の形成のためにも、有効ではないか、と思われます。
 ただし、最近静岡県で事業仕訳をトライしたところ、「これは本来県議会でやる議論ではないか」という感想が、出ました。

 議会が本来の予算案審査機能を果たしていると思われていない、このことが、国民から見て、「赤字は長年与党だった自民党が、国民が関知しないとことで勝手に作った」、「与野党問わず国会議員と官僚が、国民の知らない間に積み上げた赤字で、国民は被害者」という意識を生む背景にあるのではないでしょうか。もちろん、我が国の予算委員会の審議の多くの時間が、予算審議以外(スキャンダル追及等)に費やされ、膨大な予算書の数千の項目を1つ1つ洗っていくような議論にはなっていない、ということにも問題はあるのでしょうが。

 誤解のないよう申し上げますが、私は、いままでの政府与党の予算編成のやり方のみにこだわるものでは、ありません。制度疲労している面も、多々あり、改革が必要、と考えています。ただ、改めるなら、納税者たる国民にとっていい方向にする必要があります。

予算全体に公平に目配りして、人件費なども含めて無駄を省くというなら、スプリング・レビューと言って、予算成立直後の4月から、かなりの人数と手間を投入して、徹底的な見直しをかけていくべきでしょう。、それをやらずに「はじめに金額あり」で、特定分野狙い撃ちをするなら、それは無駄のカットで生み出した財源ではなく、政治判断として、ある政策をやめる、という痛みを決めることです。もちろん、そういう政策の取捨選択をせざるをえない財政状況ではあります。
 どれを捨てて、どれを取るか、が新与党と、旧与党で異なる、それを国民がどう判断するか。
本当に数兆円をカットするなら、最終的には総理の判断、それも痛みを伴う判断になるでしょう。民間仕訳人にまる投げできるような話でしょうか?小泉総理は、経済財政諮問会議で、民間議員の厳しい意見と、閣僚が対立しても、最終判断はすべて自分でやっていました。
 小沢一郎氏の「日本改造計画」には、「改革には痛みが伴うが、やるべき」と、はっきり書いてあります。小泉総理の就任後の所信表明でも、「数年は痛みに耐えてください」と、明言しています。
 しかし、今回選挙の民主のマニフェストに、そういう明記があったでしょうか?


この記事へのコメント
こんばんは。昨日より拝見いたしております。
浜松出なものですから、気になりました。

> かなりの人数と手間を投入して、徹底的な見直しをかけていくべき

衆院で絶対安定多数を超える3分の2を押さえていた旧与党が、
なぜやらなかったのでしょうか。
4年間も、圧倒的優位にあったのに。
先生のように、財務畑に詳しい方も多くいらっしゃったのに。
野党転落後に「ああすれば、こうすれば」と言っても、遅過ぎます。
先生も、バッジを付けているうちに取り組まれたら良かったですのに。

小泉さんの「構造改革」は、残念ながら大企業・金持ち優遇のための
「改革」であったと、一庶民であるわたしは感じております。

数年痛みに耐えていたら、どんどん痛みが強くなった。
だんだん感覚がマヒしてきて、最初の痛みなんて大したことないように
感じられてきた。
格差社会の下方に居ると、「改革」の虚しさに涙してしまいます。

先生は今でも、「小泉さんの構造改革は素晴らしかった」と思われますか?


こまごました無駄を削るのも大切ですが、
政策や事業自体が無駄なのであれば、バッサリ切り捨てるのも
大切なことだと思います。
「万人にとって無駄」ということは少ないででしょうから、
そこは政治判断ですね。
Posted by naruse at 2009年10月20日 02:21
今月8日発売された池田信夫氏の「希望を捨てる勇気」によれば、現下の日本における最大の問題は労働市場の硬直性だそうです。因みに今朝の読売新聞の記事によればホンダは日本を出ていく決意を固めたようです。

これを解決するためには規制撤廃=構造改革以外にないようにおもわれますが、安倍、福田、麻生内閣とだんだん後ろ向きになり、竟に鳩山内閣で真後ろを向いてしまいました。

失われた30年になりそうな予感がします。
Posted by namek21 at 2009年10月20日 08:40
小泉元総理は、国民に対して”傷みに耐えてください”といいましたが、自分は痛みとは無縁の優雅な生活をしています。それにたいするご意見は?
天下り先に流れている12兆円の血税、これに関してのご意見は?
自民党政権の政策は正しかったと言うご認識でしょうか。ではなぜ、失業者の増加、自殺者の増大、残虐犯罪の頻発、年収300万円未満所帯の増大を招いたのでしょうか?
まず、今までの自民党の政策を完全に否定するところから始めないと、自民党は再生しないと思います。
もっと言えば、自民党そのものを否定し、新党を結成するぐらいの覚悟が必要なのではないでしょうか。
Posted by イザヤ2 at 2009年10月20日 09:12
同感!!!

事業仕分けなるものは、方針との整合性や効率性を追求するもののはずですから、方針が明確でないと出来ないはずです。仙谷大臣が3兆円程度と言ったのは、行政刷新会議で可能な範囲として目標値を述べたのでしょうね。その程度なら、曖昧な方針の下でも出来るだろうと言うことかと思います。それに対して、総理も官房長官も「もっと切り込んでほしい」と言っているらしいですが、いったい誰に言っているのでしょうね。95兆円+αを絞り込んで予算を策定するのは行政刷新会議の役割なのでしょうか。予算策定プロセスが全く曖昧です。

本来「骨太の方針」のような大枠を打ち立てて、それに基づいて予算化するべきです。それ無しに要求の羅列から始めたのでは、国家運営の目標達成を効果的効率的に行うことは出来ません。方針を立案するのは、国家戦略室の役割のはずですが、管副総理は逃げ回っています。古川副大臣も、12月始めに来年度の経済見通しが明らかになってから方向付けると悠長なことを言ってますが、これも逃げのように思えます。現段階で判断すべき事柄について、鳩山政権が曖昧にしているのは不思議でなりません。このままでは財務省が前面に立たざるを得ないでしょう。役人主導と言われることを恐れているのでしょうか。
Posted by 中川 at 2009年10月20日 09:51
小泉氏の「数年は痛みに耐えてください」と言ってから何年も経過していますが
まだ痛みしかありません。病気もそうだけど目安がわからないと耐えられませんよ。
市議にしても県議にしても国会議員にしてもどこか天下りの役人みたいに
ひな壇に飾られてる名誉職としてしか思っていない議員が殆どでしょう。
各議会が予算案審査機能を有せないのなら膨大な経費等は議員から没収してその予算で会計士等雇えばいいのでは?
所詮議員といえども素人は努力しなければ素人なんですからww

そういえば、小泉氏は竹中さんとゆうちょ資金でアメリカの国債を大量に買いましたよね?痛みって国民だけが痛んで苦しんで上の人たちがウハウハなのが痛みなんでしょうかね? 
民主党政権になっても同様の事は起こりうりますし、さらに日本人の基本的権利を抹殺するような国になるようです。自民よりマシと思って民主に投票した人はきっと民主よりマシともうじき気付くでしょうw
早く政権転覆しないかな~~
Posted by くま3 at 2009年10月20日 10:47
私は、政府が税金の無駄遣いをやめるということは今まで行ってきた政策・事業を止めることを指すと当然に思っています。大部分の有権者もそうではないでしょうか。決して役所の建物内の電気代や文具代や残業代の節約にとどまりません。

民間人が仕訳けに参加して、「この事業は税金の無駄遣いだ」と提言し議論を起こすのが良いと思います。
現役の役人にそれを望もうとしても、対象の事業が政治家の肝いりだったり、すぐ目上の上司の業績だったりもしくは自分の存在意義そのものなら、結局自分のクビが一番大事ゆえに、とてもやめようなんて言い出せないはずです。
例えば行政機関に情報の公開請求をしても、プライバシーを建前にやたら黒く塗りつぶされている文書というのは無駄・不正な支出が隠れている可能性があると疑えるでしょう。
たくさんの仕訳人が事業中断を提言し、最終的に政治家が決断すればいいと思います。

政策の中止は、その政策で雇用や利益を得ている人に痛みを伴うのは必須です。民主党は、確かに綺麗事ばかり言って痛みには触れませんでした。しかし今までの自民党政権下の事業が税金の無駄でごく一部の関係者だけが潤っているという例を挙げてそれを正すのに、あらかじめマニフェストに明言する必要は特にないと思います。無駄を新たに発見すれば、むしろ支持され続けるではないでしょうか。
公共事業を受注してきた業界は標的です。日航の経営行き詰りをきっかけに地方空港も廃れるところが出てきます。自民党をカネや選挙運動で応援し見返りに保護を求めてきた業界は正に痛くなります。自民党政治家が国の税金で地元に作った施設も税金垂れ流しと烙印を押されれば、消滅の危機です。

そもそも税金の使われ方をより一層透明にし、政治家や役人の無駄・不正が隠しにくいようにして欲しいし、政権交代によって国民に選挙で支持された政治家主導で政策の廃止を決めるのがいいと思います。
Posted by フリーター at 2009年10月20日 12:15
片山さん こんにちは。

わざわざ、お礼のお電話をいただき ありがとうございました!!!

赤福いかがでしたか???先生 発音が違ってましたよ
あかふく じゃなくて
あかふくです!

政治って 奥が深く 難しいですね・・・
改革を断行すれば 必ず 反対意見が出て、逆の事をやれば それに対しての 反対意見も必ず出てきて。。。
僕は 小泉総理の改革は 若干 族議員とかに配慮した所もありますが 凄く よくやったと思います。

ただ それを安部内閣や 福田内閣で 継続してできなかったから 小泉総理に対して 皆 批判するんだと思うんですよ・・・
そして 麻生内閣では 小泉改革を全否定してしまった為に いまだ 小泉さんが 悪かったみたいに よってたかって批判されてるんでしょうね。。。

拉致被害者 5人と ご家族8人(脱走兵一人を含む)日本に帰国させた功績は誰も称賛しないのが 何より残念です。
あの帰国の時には 日本中が涙したはずなのに 同じ政治家から 多くの批判を浴びましたし 共産党と民主党の長島さん、安住さん以外の野党(現与党)は
売国奴扱いしてたのを 鮮明に覚えています。

生活が苦しくなると政治家の責任にして!!生活がよくなると 己の努力みたいな人間が多いのも 矛盾してると 常々思ってます。
僕も生活は決して楽ではありませんが それは自分自身の努力不足であって 政治の責任なんかじゃありません
Posted by 三重県の自民党ファン at 2009年10月20日 14:49
事業仕訳のこと、テレビで見ていて、おばあちゃんが、「そこのあんた、あんたはバスに乗って回ってから言ってるのっ」とか言って乱入すればいいのにー、とか思いました。

この和光市の検討会、NHKでしつこく流していますね。

一緒に見ていた夫は、確かにいらないかも、というので、じゃあお年寄りには出歩くなって言いたいわけ?とかみついたら、じゃあ、タクシーを使わせて、乗車賃を補助すればいい、なんて、あ、それ北海道で詐欺やった手口になるよー。

お年寄り関係の事業って傍目から見るとムダかもしれないけど、お年寄りが一日も長く介護や医療費を膨大に使わないように工夫することも必要だし、それが福祉だと思います。
保育所や学童保育の充実の方が雇用も生まれるし、バラマキよりはいいと思うのですが、これも事業仕訳的には民間に委託してムダをカットとか言われそうです。
でも福祉って、管理機能もないと、福祉にならないと思います。

予算を作っている大臣はほとんど男で、福祉福祉言う割には実感としてわかってないでしょって見えますね。
静岡にブラジル人向けの支援機関を作るとか言っているそうですが、そういうので、定住者も増えて、多文化地域ができあがりそうですね。

さつきさんの壮大な経済の話をぶったぎってすみませーん^^;
Posted by 0子 at 2009年10月20日 17:15
いくら正論であっても、「その原因を作ったのは自民党ではないか」と一括されてしまっては、やるせないですね。何も言えなくなってしまいますね。

バブルの発生を制御できた例はないし、グローバル化にともなう労働コストの低下を政府が止めることも出来ないだろうし、結果責任とはいえ、政権政党とは悲しいものですね。

論理的に過去の政策の評価をしても、このムードは変わらないでしょうし、却って煽ることになるかもしれません。恐ろしい世の中です。情緒的に対応するなら、ダーティと思われている部分を切り離すことも一案です。何がダーティかは難しいですが、戦争責任を軍部に押しつけるように、犠牲者を出しますかな?西川社長お疲れ様でした。
Posted by 中川 at 2009年10月20日 19:48
 初めましてです(だと思います)

 私はK先市在住で、以前まで無所属のK内氏を応援していましたが、彼が社会主義的な思想の持ち主であると判ってきたので、これからは片山さんの言動にも注目していこうと思っています。

 K内さんのブログは、信奉者のよいしょコメントで埋め尽くされています。

 ここでは、建設的な意見を述べていきたいと思います。

 しかし、片山さんは、事実無根の誹謗中傷が数多く寄せられているみたいですね。

 私も誤解していたところがありました。

 もっと、片山さんのことを信頼していこうと思います、誹謗中傷に負けずに頑張って下さい↑↑
Posted by 緑の保守の尊野ジョーイ at 2009年10月20日 20:59
無駄の排除というのは地方の切り捨てです。
交通量の少ない高速道路でも、地方にとっては不可欠です。交通量の少ない対面交通の高速道路で、失われるのは、地方の地域住民の命です。
市内循環バス。利用者が多ければ民間でも出来ます。利用者が少なくて、民間では維持できないから、赤字になるのを承知で公営にしています。それは、少数であるお年寄りや学生の足を確保するためです。
収益や、利用度が低いことだけを評価の対象とするのは間違いです。
Posted by かも at 2009年10月23日 01:37
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