事業仕訳をめぐる二極分解の世論が意味するもの

 事業仕訳について、いろいろな方から、ブログ、ツイッターに、たくさんのコメントをいただていますが、最近の世論調査を拝見する限り、民主党の政策の中で、もっとも支持されているのが、この事業仕訳です。

 そもそも、事業仕訳をこつこつと、地方自治体に教えてきた、構想日本の加藤代表がおっしゃるように、これは手法であって、政策ではありません。
 予算は、優先順位を政治的に選択する、与党にとっての究極の経済政策で、政治そのものです。

 そのことをさておいて、世論は以下のように、2分されていますね。

  公共事業関係、農林水産業、医療福祉関係、地方自治関係、、。国の予算の動向が、ご自分の仕事に直結することが、ある程度実感されるような方々には、事業仕訳は、一般に、非常に評判悪いですね。「人の生活踏みにじりやがって、何様?しろうとに何がわかるんだ!怒り心頭、とんでもないところに投票しちゃった、という声まで聞かれることがあります。
 そして、スパコン問題で、エンジニアや研究者の方々も、???を呈していらっしゃる。

 今週のアエラに特集されているように、財務省以外の事業官庁は、罵倒され、話もきいてもらえない、との恨み節、、。

 しかし、しかし、しかし、フツーの方々には、「あの、事業仕訳っていうのを、初めて私たちなんかにも、見せてもらえて、民主党に政権交代してよかった。」という声が、結構多いんです。

 「私たちなんかにも、、、」ですよ。何故そんなに、へりくだられるのでしょうか?全く同じ表現をいろんなところで聞きました。
さらに興味深いのは、1つ1つの事業については、「ちょっとやり過ぎ、あれじゃ問題出てくる、パフォーマンス、あんなに短い時間で、本当にわかって切っているのかしら、違うんでしょう? 利用する人からみたら、○●は、無駄じゃないわよね。天下りがいるっていっても、それでも必要なものもあるわよね、天下りを追い出して、その事業はやるってことはできないの?」などなど、事業仕訳が下した判断を、もろてをあげて全面承認していらっしゃるわけでは、けっしてない、ということです。

  この一連のご反応から、改めて思いますのは、江戸時代から?あるいはもっと以前からの、日本人の意識に深く内在する、と思われる、「お上観」。(お上意識?)
 日本は、民主主義、とはいえ、それは「建前」であり、権力を握った政府によって『余らしむべし知らしむべからず、」で運営されてきた、ずーっとそうだった、だから権力の源泉である、予算の中身の決め方なんて、自分たちの目にさらされることなんか、ないんだ、という、あきらめなのか、無関心なのか、
 およそ、革命で民主主義を実現した国ではありえない、この空気が長年流れ続けてきたなかで、非常に新鮮だったんですね、、。

 「なんで大蔵省はこんなことに気が付かなかったんだろう、、。」ということで、今後の「本当に大きな金額が削れるかどうかを決める、政治決着の場で、財務省は、事業仕訳の判断を、裁判員の判断か、それ以上に「水戸の印籠」のごとく、振りかざすでしょう、、。

 まあ、彼らの気持ちもわかっていただきたい、元主計官としては、、。我が国の財政赤字がかくも拡大したのは、他の政府に比べて、大蔵・財務の力が決して本当に強くはなかったからなのですから。

 民主党を下請けにして好き勝手やってる、と、「霞が関村」で袋叩きに合おうが、使えるものは何でもつかいたい、というのが本音でしょう、、。

 本当の財政民主主義とは、何なのか、、、。おととい、ツイッターで議論したように、なぜ日本の予算委員会で、事業仕訳的な議論を、徹底してやってこなかったのか、55年体制の下で、政府与党の予算案がほぼ無修正で通り続けてきたのか、それが崩壊していく過程、そして、いま、、。

 この点は、事業仕訳が終わったとき、そして、予算の政府案ができたときに、総括したいと思います。


この記事へのコメント
国益・予算に関することに外国人が口を挟むのが我慢なりませんね。
予算委員会でやって欲しかったです、事業仕分けは。

自民党には来年復活してもらわないと。
Posted by すことま at 2009年11月25日 00:00
スパコン問題。
今までスパコンの事業者や利用者は、税金を投入してまでも開発した方が納税者が結局これだけ得するのだと説明することを怠ってきたことが一番の問題です。「日本は科学技術立国だから」なんて大雑把な言い方などダメです。

「私たちなんか」社会保険庁の役人にいい加減な記録しかしてもらえなかった。どうせ私たちなんか…。

巨額の財政赤字は大蔵省財務省の責任ではありません。
長期に渡る自民党支配のためです。そして国民は政権を交代させることの出来る野党を育ててこなかったことが悪いのです。

政権が変わったから既存の制度が見直しできるようになったのです。
必要なのは政権交代です。決して財務省の権限強化ではありません。
Posted by フリーター at 2009年11月25日 00:31
指示→支持
Posted by 誤字の指摘 at 2009年11月25日 03:18
最近特に思うのは、60才以上の現役を引退した世代の目に余る暴挙の
数々です。

今回の事業仕分けでも、独法の理事や嘱託者が1500万以上の年収と
豪華な部屋を与えられていた事が発覚した。
こうのような事が税金で賄われている事が問題であり、それが無くなるだけでも事業仕分けはやった価値があったと私は思います。

このようなことを許し、今の財政状況にしてしまった原因は、平成以降の
自民党政治にあるのは明らかであり、しかも年寄りによる将来ビジョンのないその場しのぎの結果だと思います。

JAL問題もしかりです。他の民間企業は、当の昔に企業年金も含めた
リストラは終わっており、多くの方が少なからず痛い目にあっています。

現役を引退した世代は、現役世代に迷惑を掛けることなく余生を静かに
暮らしてください。

自分だけよければいいという考えが蔓延してしまった真の原因は、
現役を引退した世代の責任だからです。
Posted by naobox at 2009年11月25日 07:11
パンとサーカス---古代より統治の原則は変わらず。猛獣に打ちのめされる奴隷に哀れさを感じるのはせめてもの近代的良心。統治者が次に打ち出すサーカスは、普天間か、核密約か。景気対策に食い違う閣僚発言も政治ショウと思えば納得。

民間会社では、月々の予算進捗をチェックし、過不足を調整し、情勢の変化に対応する。この積み重ねが創意工夫・効率の追求、収益の極大化、引いては人材育成。これも顧客本位が自らの利益と一致するが故。しかるに、行政においては収入を管理する者と使う者の立場が乖離。公衆の面前で予算攻防合戦をしたところで恨みと狡猾さを生じさせるだけ。如何にうまく立ち回るか。

予算執行レベルまでも政治が立ち入るか。官僚自らが収入(税収?)と支出のバランスを取るように出来ないものか。現場のことは現場に。コスト意識のためには民営化、それとも地方分権か。

中央レベルの選択と集中、戦略的重点化。もっと必死に。
「官僚たちの夏」---今は昔---
Posted by 中川 at 2009年11月25日 09:17
>日本は、民主主義、とはいえ、それは「建前」であり、権力を握った政府によって『余らしむべし知らしむべからず、」で運営されてきた

今はおつきあいしていませんが、今は多分70歳過ぎになるある方、お仕事で中国にもよく行かれてましたが、その方が、中国の方によく「日本の方がよほど社会主義ですね、うちは日本ほどではない」と言われると言ってました。
その方自身もリベラルな方だったので、日本はひどい国だ、が口癖だったのを思い出します。
もっとも、その意見には大きな疑問があり、このおっさんとはつきあえない、と袂を分かちましたけどね。

事業仕分けでは、非効率というものがやり玉にあがっていますが、国の予算は、個人や法人、地方ではできない規模のことをやるためだと理解していますので、長期的な物差しではかることも必要ではないかと思います。
そういう意味では、仕分け人やまとめ役、説明者各人の見識や器量もはかれた、という副産物もあったのではないでしょうか。
Posted by 0子 at 2009年11月25日 09:17
私の偏見かもしれませんが、

事業仕分けを評価してる人って、リタイアしたシルバー世代とか、働いてない専業主婦に多い気がする。
逆に、批判してる人はサラリーマンとか学生とか、現役バリバリだったりこれから社会に出ようとしたりする人に多い。
つまり、社会と関わりがない、社会というシステムから経済的に外れてる人ほど、評価する傾向があると思うんです。

片山さんのおっしゃる、『国の予算の動向が、ご自分の仕事に直結することが、ある程度実感されるような方々には、
事業仕訳は、一般に、非常に評判悪い』という指摘は、私の実感にピッタリと当てはまります。

なんか、無駄を削ると言いつつ、知らないうちに削っちゃいけない大黒柱までギコギコ傷つけて、
ある日突然大きな地震が起きたとき、国家という家がぺしゃんとあっけなく潰れちゃうような気がしてなりません。

世界各国の株価上昇が目立つ中で、日本株の出遅れが鮮明なのは、投資家たちもこんな漠然とした不安を抱えてるからではないでしょうか。
Posted by たなとす at 2009年11月25日 21:04
今夜は東大の先生たちの緊急提言のネット中継を聞きながら夕食を。
現在、大学1年の愚息は「これ聞きながら飯って」とうんざり顔でしたが、ここいらへんが東大生と某私立大の大きな違い、と思いました。

東大の先生が、久しぶりに興奮した=むかついた、とおっしゃっていたのが、失礼ながら面白く拝聴しました。

我が夫は、仕分け人とれんほうさんと東大の先生とでディスカッションすれば視聴率とれるのに、とか言っております。

そして、東大の先生たちの全世界的なネットワークにも注目。

日本の株安と事業仕分けの相関関係もあるような気がしますが、あくまでも気のせいということで。

私は田舎の国立大卒ですが、国立大の独立行政法人化には、ちょっと疑問を持っておりまして、健全な運営という面では良かったのかもしれませんが、変な競争心をあおったり指摘は適当ではないと思っております。
子供だって大人になるのには時間がかかるので、教育も長期的な展望が非必要ではないかと。
Posted by 0子 at 2009年11月25日 21:38
↑すみません。
とんでもな間違いでした。
興奮ではなくて、公憤でした。
これだから田舎の大学出身は、と戒めしめております。
しかし、公憤とっしゃるからには、ものすごくお怒りのご様子ですね。
Posted by 0子 at 2009年11月25日 23:02
事業仕分けの最大の功績は、国民の予算に対する関心を喚起したことにあると思います。

非専門者が、1時間足らずで、バッサバッサと斬ることは、私の目には大変荒っぽく映ります。
しかし、非専門者だから見えることもある。物事を多角的に見ることができる長所もある。
議論は長ければよいともいえない。専門家が長々と議論しても、専門家のプライドや信念・理念の衝突ばかりで、議論が進まないこともある。

結論の当否については、いろいろ議論があります。
私自身も、科学技術予算の削減等は反対です。
スパコン予算の見直しなど、許しがたいと。
そのほかにも、人の育成に関する予算が削られていくのは、納得できない。

しかし、事業仕分けの結論は最終決定ではないですし、これから政治判断もあるでしょう。
さらには、事業仕分けを見た国民一人一人が、声を上げていけばよいことです。
国民が国家予算に関心を持ち、それにモノを言う。これが民主主義の原点ですから。

長年にわたって政官が一体となって、国民とかけ離れたところでヒソヒソと政策を決定してきた行政国家から、日本が脱却する良い契機になると思います。

それが民主党政権の非現実的なマニフェスト至上主義路線からの是正を促す契機にもなると思います。
Posted by 烏賊のイカロス at 2009年11月26日 00:08
 行政刷新会議は本来事務官が各事業に入り込み熟知したうえで仕分け人が仕分けするというのがやり方だったはず。今回のように熟知しないでやれば、財務省や仕分け人に負担がいくのももっとだし国民の中から疑問を抱くのも当然だと思います。来年の事業仕分けは本来の姿にして欲しいのと国会を強化して、検査院を取り込んで国会議員が事業内容規模予算を自由に与党野党とわず、引き出し情報を国民に国会議員経由で知らせて欲しいです。仕分けに問題があるようなら、国会議員が現場の人間つれてきて、仙谷大臣と対峙してもいいのかと思います。そこまですれば、かなり納得いくものになるのではないかと思います。あと、破壊の行政刷新会議が動き出したので、創造の国家戦略室も動かないとダメみたいですね。
Posted by 月 at 2009年11月26日 01:24
 「私たちなんかにも、、、」

 自己卑下しすぎですよね。

 私の知り合いなんかも、市議でさえ畏れ多いと感じると語っていました。

 私なんかにすれば、「たかが市議ごときが(失礼)」ってカンジですよ。

 地元の市議と気さくに色々と相談しています。

 国会議員にしたって、税金で養ってもらっているんですからね、気兼ねする必要などないはずですよね。

 日本人は、権威や権力に弱いんだよなぁ(私が日本人離れしているだけかもしれませんが(苦笑))
Posted by 緑の保守の尊野ジョーイ at 2009年11月26日 10:25
26日までで、防衛省予算の「仕分け」が終了しました。
総額4兆7008億円の概算要求に対して、「仕分け」の対象となった金額は、新規後年度負担額を含めて1兆3102億円。
これに対して、「事業廃止」1件、「予算計上見送り」1件、「予算要求の縮減」6件、うち縮減幅が明示されたものは1件で、縮減幅が明示されたものを最大限縮減したとしても、予算削減効果は269億円で、概算要求総額の0.6%にすぎません。
片山さんが主計官だった当時の方が、よっぽど厳しく査定したんじゃないでしょうか。
ご感想をお聞きしたいな、と思います。
Posted by ゆうくんパパ at 2009年11月26日 21:15
やっぱりさっちゃんと現役財務省主計官とのバトル見てみたいです!
ほんとに火の出るような激闘になりそうです
ダメですか?
Posted by 湘南素浪人 at 2009年11月27日 13:58
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